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トラウマ関連障害

こちらでは、

PTSD、複雑性PTSD、発達性トラウマ障害について説明いたします。解離性同一性障害(多重人格)もトラウマに基づいていますので、こちらにも記載します。まだ概念の段階のDESNOSについても説明いたします。

※解離性障害については、トラウマが原因であることもありますが、解離のしやすい方の場合は些細な日常的なストレスが原因ということもありますので、こちらでの記載はいたしません。解離性障害については解離性障害の頁の説明をご覧ください。

PTSD

PTSDとは心的外傷後ストレス障害の略で、読んで字のごとく、心に傷をおった後の障害のことです。その方にとって圧倒的な出来事に見舞われたあとに、

フラッシュバック(再体験)

回避行動

過覚醒

が生じていて、日常生活が長く(1ヶ月以上)障害されている場合に診断します。フラッシュバックとは、外傷的体験の映像や皮膚感覚や声が生々しく心のなかで再現される状態のことです。毎晩悪夢でうなされる場合も外傷的体験の映像やそれをモチーフにした内容であることが多く、悪夢もフラッシュバック(再体験)と呼べます。回避行動とは、その体験を思い起こさせるような場所や物や事柄を避けるようにすることです。過覚醒とは、不眠や興奮や苛立ちなど緊張が続いているような状態です。

治療

薬物療法ではSSRIがよく効果を示します。カウンセリングもお勧めいたします。カウンセリングとして認知行動療法もありますが、対人関係療法あるいはSEが安全で有効です。

 

複雑性PTSD

複雑性PTSDとは、上記のPTSDがある一度の外傷体験から起こってくる障害であるのに対して、長くそして何度も繰り返された虐待やいじめや性犯罪が原因で起こってくる障害です。症状も、上記のPTSDの再体験、回避、過覚醒の症状があり、さらに、

情動調節障害(気持ちのコントロールがうまくできない)、

対人関係障害(引きこもるなど対人関係が築けない、ひどい親を捨てることよりも親がいなくなることの方を怖がる)、

否定的自己概念(自分を否定的にとらえてしまう)、

この3つの症状が加わります。そして、これらの症状が規定以上あって、日常生活に支障をきたしていると複雑性PTSDと診断されます。長く苦しい幼少の時代をくぐり抜けて社会的に適応されていらっしゃる方でも、心の中の傷は、苦しくて辛くて困難で耐え難きを耐えていらっしゃりながら社会生活を送っておられる方が多いです。ただ、そのような方は複雑性PTSDと診断する必要はあまりありません。いじめや虐待を受けた方が、皆、複雑性PTSDになるのではないですし、複雑性PTSDと診断されないからいじめや虐待が軽かったということではないのです。ましてや、PTSDや複雑性PTSDになってしまわれた方の心が弱いなどということは決してありません。

さらに、長くいじめや虐待を受けていて解離症状を来している方は、その症状と照らし合わせて、解離性障害や解離性同一性障害とも診断します。解離性障害と解離性同一性障害については、それぞれ説明していますので、そちらをご覧ください。

治療

発達性トラウマ障害の項目の治療をご覧ください。

 

発達性トラウマ障害

上記の複雑性PTSDには診断基準があり、それを満たさないと複雑性PTSDとは診断されません。しかし、長く続くいじめや虐待の経験は、とても複雑な症状を出現させて、その症状は、複雑性PTSDだけの概念におさまるものでは到底ありません。そこで、発達性トラウマ障害という診断がなされるようになりました。

親から愛されたり愛したりするという関係は崩壊していて、自分が虐待されたり暴力を見続けたりしていた、触れることや触れられることを嫌い、音への漠然とした嫌悪感があり、気持ちのコントロールができず、感情がわかなかったり虚無の状態であり、痛みや皮膚の感覚がわからない、明らかに異常と思われるような無謀な行動をとる、自傷行為を繰り返す、異常なまでに自分の感情をおさえようとする、目標を持てない

これらの症状が、決められた数を満たせば、診断されますが、上記のほとんど全ての症状を持っておられることが多いです。

治療

発達性トラウマ障害の方や複雑性PTSDの方の通常診察やカウンセリングをしていてまず思うのは、自己そのものの危うさや生きるということ自体への嫌悪感、感情コントロールの困難、対人関係構築の困難を強く感じていらっしゃるということです。治療も一筋縄でいくはずもありません。カウンセリングをお勧めします。薬物療法も必要である方が大多数です。  

 

DESNOS

特定不能の極度のストレス障害のことで、この概念は、精神科医が診断の基準とするDMSやICDにはまだ採用されていません。しかし、臨床をやっていて、この概念が、虐待を長く受けた方の症状を網羅していると感じています。少し難しいですが、なるべくわかるように記載してみます。

1 感情と衝動のコントロールができなくなった
 場にそぐわない極端な感情が起きる
 摂食障害や自傷行為など自己破壊的行為
 自殺願望
 性的衝動や極端な性的抑制
 怒りを表せなかったり抑制できなかったりする

2 注意と意識の乱れ
 解離症状と離人症
 トラウマの経験による記憶喪失または記憶過敏

3 自己認識の乱れ
 自分を否定的にとらえる
 無駄、無力であるという感覚
 羞恥心 屈辱感 罪悪感 自責の念でいっぱいである
 汚れている 辱しめられていると感じている

4 人間関係の乱れ
 人は信用できないという想いが持続している
 再び被害を受ける
 他人の犠牲になる

5 身体化
 持続する痛み
 消化器循環器心肺の症状
 転換性の症状
 性的症状

6 意味体系の乱れ
 信念の喪失
 無力感と苦悩の感覚

このDESNOSの概念に、解離性同一性障害の病態が入れば、虐待サバイバーの方の困難な症状を、全て網羅するのではないかと思うくらい臨床的に合致しています。

 

解離性同一性障害(多重人格)

いまだにこの疾患の存在すら認めず、診断もしない、従って治療もできない精神科医が多いのが現状です。

人は誰でもそれぞれの状況に応じて口調や性格を変えて世の中を渡って行っています。小学生であっても親に見せる顔、友達に見せる顔、他人の前での顔、などいくつもの場面で自分を使い分けています。しかし、人格は統一されていて、記憶が分断されることはありません。解離性同一性障害の方は、心の中にいくつもの人格が別れて存在しています。一番長く一番表に出ている人格を主人格、それ以外の人格を副人格と呼びます。時々人格が交代をして表に出てくるので、その間は主人格の意識は分断されて、記憶がない状態となります。患者さんによっては、副人格が主人格の行動を見張っていたりすることがあります。副人格の行動に主人格は覚えがないので、嘘つきと呼ばれたり、勝手な人と思われたりして大変困る状況を作り出します。また副人格が勝手に買い物をしたり、遠くにでかけてしまって、買った覚えのないものが部屋にある、気がついたら知らないところに来ていた、と言うこともあります。小さな頃のトラウマが原因で人格を切り離してしまうことが多く、そのときの小さな子供の人格が心の中で癒やされるのを待っていることが多いです。人格数はなぜか4人という方がとても多く、10人以上の方も数名おられました。解離のしやすさが関係していると推測しています。

 

治療

当院では人格の統合を目指しません。それぞれの人格の平穏を目指して精神療法をしていきます。主人格は、副人格たちの言葉を幻聴として聞いていることがあります。副人格同士は交流があることが多かったですが、全く交流なく副人格それぞれが孤独に暮らしていることもありました。主人格は副人格たちと交流がないことが多いので、時期を見極めて主人格に心の中に降りていってもらいます。この事で精神療法が一段と進みます。この病気のご家族の方は、患者さんがこの疾患であることをご家族に告げても、びっくりなさることは少なく、むしろ腑に落ちた、とおっしゃって治療にとても協力的になってくれることが多かったです。解離をしなくても生きていけるとそれぞれの人格が思えるようになり、人格交代が起こらなくなっていき、気がついたら自然に人格が統合されているという順番になります。人格のみなさんで上手に生きていける術を身につけていかれて、統合されずに過ごされていく方もおられます。いずれにしても、それぞれの人格を尊重し、それぞれの人格の平和を維持していくことが重要になります。カウンセリングが主体となりますが、薬物療法も助けになります。

 

 

 

 

 

 

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